2010年 10月 20日

CAPOGATTO 2007

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カポガット 2007。

トスカーナ州キャンティ・クラッシコの中心地、グレーヴェ・イン・キャンティ。
そこから未舗装の小道を更に登った小さな集落、ルッフォリ。
2008年、2009年と2年間働き、栽培と醸造を任されたワイナリー、
ポデーレ・ポッジョ・スカレッテがある。

個性を持った小さな畑がモザイクのようにいくつも点在するなか、
唯一、延々と広がる大きな畑、ヴォルペ。
新しく開墾したこのヴォルペ畑は、コンクリのような巨大な砂岩質で、
開墾には、普通の畑とは比にならないような苦労を要した。
斜面に延々と連なるサンジョヴェーゼの畝の、ピアントナイア畑寄り。
一番端の畝だけ、ヴィットリオとユーリは、
カベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニョンとプティ・ヴェルドとメルロを植えた。

2007年、若木から初めての収穫が行われ、
自分は2007年ヴィンテージの熟成から瓶詰めまでの作業と、
2008,2009年ヴィンテージの栽培、収穫、醸造作業を行った。

若木は天候に左右されやすく、また、ひと畝ひと畝が非常に長い斜面なので、
ヴォルペ畑での栽培作業はとてもハードだ。丁寧に、迅速に、そして忍耐強く、
日の出から日の入りまで長い斜面を延々と、幾日も歩き続けないと、
葡萄がこの手を必要としているその時に、適切な処置を施すことができない。

2008年にカンティーナで働き始めた時、
まだ世に出ていない、まだ名もない、そのワインが眠っている小樽には、
白墨で"VOLPEAUX"(ヴォルペオゥ)と書かれていた。
苦心して新しく開墾したヴォルペ畑の名と、
サンジョヴェーゼで作るフラッグシップワインのイル・カルボナイオーネとは一線を画し
新しい試みであるボルドースタイルを組み合わせた、ユーリの言葉遊びの造語だ。
ワイナリーにとっての新しい試みということ以上に、
根っからのワイン好きであるユーリの、壮大で真剣なジョコ(遊び)のようで、
このワインの誕生をユーリは本当に楽しみにしていた。

それから長い熟成を経て、2009年7月、
ユーリと二人で、いよいよこのワインの清澄作業を行い、瓶詰めを行った。
2009年の秋、収穫も済ませ、カンティーナでユーリと二人で醸造作業を行っている時、
いよいよ世に出るこのワインの名前やエチケットを決めかねるユーリは、
嬉しそうにそのアイディアを色々と話してくれた。

"VOLPEAUX"と呼ばれていたこのワインを、ユーリは"カポガット"と名付けた。
"カポガット"とは、ルッフォリにフィロキセラ以前から続く、独特の植樹法の名だ。

エチケットのデザインは幾つかデザイナーから上がってきたが、
ユーリはどれもひとつ満足をしなかった。何度もそれらを見せてくれながら、
「これはカルボナイオーネとは全く違うものなんだ。完璧にクラシカルなボルドーにしたいんだ」
と言っていた。

ついにユーリはエチケットのデザインを全て自分で行った。
ワイン名などの字体やレイアウトも、"IL VINO DI VITTORIO FIORE"という赤い文字の入れ方も、
全てクラシカルなボルドー調を再現し、
母が描くワイナリーのイラストもカルボナイオーネのカラフルなものでなく、モノクロのシャトー調にした。
ただしイラストの温かなタッチは残しつつ。
キャップシールもワインレッドのクラシカルなボルドー調にし、
なんとワインボトルまで、カルボナイオーネなどに使っている現在のボルドー瓶より僅かに小ぶりな、
クラシカルなボルドー瓶にこだわった。
ここまでやり遂げたユーリは、完成したデザインを見せながら、いたずらっ子のように満足そうに笑っていた。

2010年1月、帰国する自分に、まだエチケットの張られていない、カポガットのケースを幾つか持たせた。
(瓶熟成はエチケット無しで行われ、エチケット張りは出荷時に行われる)
デザインは出来上がっているものの、実際に印刷されたエチケットがワイナリーに届くのは、
出発日のほんの数日あとだった。

帰国して間もなく、イタリアからエアメールが届いた。
中には、できたばかりのカポガットのエチケットが入っていた。
ユーリに電話をすると、
「やっとできたよ。この間のボトルに張ってくれよ。エチケットの位置はわかってるだろ。
こっちのエチケット張りはまだ先だから、
カズキが張るのが、ファースト・ヴィンテージの世界で最初のボトルだよ」
と笑っていた。

自分でエチケットを張ったカポガットは、OLTREVINOのセラーの中で非売品の札と共に、
輸入業者さんによって日本へ輸入が開始されるその日を待っていた。
しばらくしてやっと輸入業者さんから日本への輸入開始の知らせを受けると、
全国に先駆けて非売品の札を外されたワインは、なんだか嬉しそうに見えた。

先週、ユーリからメールが届いた。
「日曜日にやっと今年の全ての収穫が終わったよ。
葡萄はみな、とても健全で綺麗で、品質も収量もとても満足のいく収穫だったよ。」
文面からユーリの笑顔が見えるようだった。


CAPOGATTO 2007 清澄作業
CAPOGATTO 2007 瓶詰め作業

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by trimpilin | 2010-10-20 17:42 | ワイン | Comments(2)
Commented by Koudai at 2010-10-23 08:34 x
こんばんは、お久し振りです。
あのルッフォリの畑の景色を思い出すことが出来ました。
今はAlta Langhaの山奥ですが、また行きたいと思える所です。
来年頭に帰国するのでお店にお伺いさせて頂きますね。
それでは失礼します
Commented by trimpilin at 2010-11-04 17:15
お久しぶりです、コメントありがとうございます。
アルタ・ランゲは今が一番良い時期でしょうね。
帰国まで有意義な日々をお過ごし下さい。


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